lasciva blog

開発して得た知見やwebビジネスのストック

北欧、暮らしの道具店に学ぶブランディング

5/9に参加してきた勉強会に関してのまとめ。
主にECサイトブランディング関して。

【登壇者】
青木耕平(クラシコム)
砂流恵介(ゲリラPR活動家)

peatix.com

目次

  1. サイトの特徴
  2. ブランディング
  3. 人材
  4. 記事広告
  5. 質疑応答
  6. まとめ

1. サイトの特徴

メディアデータ

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PV・UU
・UUあたりPVがずば抜けてる。
・ユーザの68.6%は毎日訪問(3000人対象のお客様アンケート(2015/4自社調べ))

チャネル
Instagramの伸び率はディズニー、無印良品についで3位
・メルマガの開封率は約70%(計測は行えないが、送付したメールのうちの50%はアクセスしてるから)
 

ユーザの属性

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読者の記事の好みに関して
・恋愛結婚に関する記事はワースト2位(一般的なサイトでは必ず上位にくる)
・一番人気なのはスタッフのつけているものに関する記事
 ・購入のコンバージョンが通常の記事と比べて、3倍になる。
 ・スタッフに体験させるために、福利厚生を導入。
  ・社員全員に対して、ウィッシュリストを作成し、優先度の高いものを経費で購入し、スタッフがコンテンツを書く。
  ・コンバージョンの高いスタッフにより与えるようにw
  ・全員が記事を書く素養を持っているため、成し得ること

ユーザの価値観

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配信コンテンツの例

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2. ブランディング

【ブランドの定義】
・商品のスペックとかではなく、北欧暮らしと聞いたときに購入などを通して北欧暮らしの仲間になりたいという感覚になるか。
 =>商品を売るのではなく、仲間になるという感覚を売る。
・ブランドがある状態とは
 =>手にしていないが欲しくなる
・実際の北欧の実例
 =>実際に買う前から関係性が構築されており、購入の際には「何年も前から買いたかった 」と言われた。
 =>買いたいものがないが、何か買いたい(何も提供されていないにもかかわらず、買いたいという状態)

・Webにおいては、TOPページからくるようなファンの人が多くなること

ブランディングのためにやらないこと

レビュー機能
 =>世界観を統一するために、編集権をユーザには与えない
・ランキング、売れ筋商品
 =>小売業ではなく、体験を与えること
 =>メディアである以上、ユーザの欲しいものを紹介して、ユーザの好きなものを買うように。
  =>何が売れているかっていうのは重要でなく、魅力を伝えることが最重要
SEO、バズる
 =>SEOとかバズルかは二の次
 =>来ていただいて、滞在時間が期待値を超えることが最重要
 =>PVとか売上の責任は誰も持たないようにする
・記事の内容
 =>自分が読みたいと思うものを書く
 =>注意している点
   ・ここはあなたの個展ではない、自分が書きたいとか同業者がイケてるとかというものではない
   ・賛否両論とかになるのは絶対出さない

従来のメディアとの大きな違い

・従来のメディアは一人称で語ることはない。客観的に書く。
 =>北欧暮らしは誰が書いたのかを明確に
  ・実際にライター名を記事の一番下に持ってくるとPVはだだ下がりに
  ・ライターがどう思っているかを表現する
・時代別のメディアのありかたの変化
 ・80,90年代 => クリエーターとかのカリスマ
 ・0年代 => セレクター、カリスマ消費者(読モ等)に移る
 ・現在   =>「おしゃれな友達みたい」に感じてもらう
・Webメディアと雑誌の違い
 ・webメディア
  =>セグメント化したメディアがない
  =>広い抽象的な言葉を使う
 ・雑誌
  =>セグメント化されている
  =>具体的でかつ、読者にしかわからないようなキーワード等も頻繁に使用される

メディアコマース

・北欧暮らしとしての立場は、メディアでもECでもどっちでもいい
・ファッション雑誌としての側面
 =>面白い
 =>ものの情報を与えることが本質
・ECとしての側面
 =>売れやすくしなければならない
・相反するように思われるかもしれないが、買うことのできる雑誌みたいに捉えるのがよいのでは?
・但し、あくまでもECとして認識されることは重要。
 =>店長というの文言は最も重要(編集長とかは絶対だめ)
  => 店の人がすすめる商品と、編集者がすすめる商品ではユーザの捉え方が本質的に異なる。

3. 人材

センスの統一はどのように行っているのか?

採用で解決
 ・教育で行うのは難しいし、実際に社員全員に対して話すのは月一回の全体会議の15分だけ。
 ・元お客さんを雇い、自分が面白いと思うことをやるように指導。
  ・自社サイトからしか募集しない
  ・年一回一括採用(TOP1%ぐらい)
 

写真の統一感

 ・カメラに関して素人を取るようにしている
  ・元カメラマンとかはいないし、取らない方針
  ・どういうもの良いとか綺麗とかの価値観に関しての標準を合わせる方がよっぽど大変。
  ・撮るテクニックを教えるのは簡単

実際の採用プロセス

  1. 商品等の写真をとる
     ・1時間で撮影して、1枚提出
     ・写真撮ることそのものは基準としては問わない
     ・1時間の使い方等で、美意識や価値観など頭の中がわかりやすい
  2. コラムやお客さんへの返事を書く
     ・どういうものがユーザとして嬉しいかをわかっているかを見抜く
  3. 採用プロセス全体に関して  ・人事含め、経理も総務も全部青木がやる
     ・一次面接は青木、二次面接はスタッフにやらせる

理想の採用のあり方

・宝塚の仕組みを目指す
 ・宝塚の本質はそのコミュニティに属しているコミュニティのTOP層集団
 ・TOP層の究極系は自分の子供を宝塚に行かせる
  ・誰に対しても(宝塚の一員になれるという)ゴールを一つにフラットなルートにする
・実際に北欧暮らしでは、入社したスタッフの紹介記事においてはお客様からおめでとうと言われる
 ・人数は30名ぐらい

5. 記事広告 

hokuohkurashi.com

【概要】
・ブランドノートという形で2015年の夏頃から開始。
・大盛況で、秋口までは既にいっぱい。
・ものを売るための記事のプロ集団だから始めた。

【作成方法】
1. 複数人で30分間ブレストで方向決め
2. 担当者が記事を書く

【価格】
・2本セットで460万円
 ・高額だが、ちゃんとしたものをちゃんとした値段で売れなければやめる
 ・ディスカウントしないし、したとしても同じ熱量で記事を書く
・月間で2社のみ(記事を書く人間のリソースの問題)

【特徴】
・読者の満足度が高い。
 ・かなり長いにもかかわらず、記事広告の方が通常記事よりも読了率が高い。
・クライアントに受けがいいのは、記事の最後にある読者アンケート
 ・1週間で3、400件ほどユーザからアンケートが集まる。
 ・自由記入欄もいっぱいまで書くユーザが多い。

5. 質疑応答

顧客の関係の築き方

【計測】
・リピーター分析とかは一切してない
・唯一KPI的に数値としているのは、月間20回以上訪問したことのあるユーザの数の計測
 ・そのコアユーザによるPVは全体の50%を保っているか
  ・割合が高い => 新規ユーザが増えていない
  ・割合が低い => コアユーザが減少している
【ユーザ体験】
・左脳的快楽は求めない(安く買えたとか)
 ・セールを定期的に行うと、購入を躊躇してしまうし、買った後に後悔してしまうから。
・右脳的快楽を求める
 ・定価でしか買えなくても、「ちょっと高かったけど、いいもの買えた」と自分へのご褒美感覚で買い物させる

何故「北欧」に目をつけ、事業としての成功の確信を得たのか?

・2007年にたまたま北欧雑貨を売り始めたら、飛ぶように売れた。
・1年以内ぐらいに検証した結果、フルコミットすることに。
  1.流行としてではなく、一つのライフスタイルとして定着する
   2007年前後に北欧というキーワードやikeaかもめ食堂等が流行し始める。
   北欧は人口が少なく、事業が大成するには海外展開が不可欠。
   自分で宣伝しなくても、北欧企業が勝手に広めてくれる
  2.商品の品揃えや仕入れがサステイナブル
   世界大戦で影響を受けていないので、工場が多く残っている。
   リテンションと製造の仕組みが確立されている。