「アパレル・サバイバル」を読んだ
- 作者: 齊藤孝浩
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/02/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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読んだので、簡単にまとめた。
アパレルに関係しているwebの人には、アパレル業界の構造等が俯瞰できて面白いので、あまり詳しくない人にはオススメ。
まとめた内容に偏りがあるが、前提として、私は下記のような属性の人間である。
- Web業界でエンジニアとして開発したり、日頃から新しいサービス・アプリをチェックしてサラッとは触る
- 服の売買では、ZOZOTOWN、メルカリは結構使ってる。
- 20代後半で、男性の中では比較的ファッションに関心がある
目的、モチベーション
- ファッションに興味があり、ビジネスモデルとして理解したかった。
- ECサイト・アプリの開発を担当しているため、技術的・事業的な潮流を理解したかった。
全体の感想
服のライフサイクルの概観や、それに伴う課題がつかめた
服は利益率が高いと聞いたことはあったが、何故そうなってしまうのかが理解できた。
簡単にまとめると、
- 服という商材の特性上、デザイン的なトレンドや季節性から売れる時期が限られる(在庫リスク)。
- 企画し始めてから1〜2年後に製品化されることが多く、需給の予測が難しく、ヒットしたからといってすぐに再生産するのが難しい。
SPA(ユニクロ、ZARAなどの企画から生産、販売まで一貫して管理している小売)が革新的なのは、↑の課題を解決したことにある。
メルカリは思っている以上に色んな場所で影響を及ぼしていること
私もメルカリをよく使っているので、服などを買う前にはメルカリで「安く新古品が買えないか、もし買ってイメージと違ったら最悪いくらぐらいで売れるか」などを考えるので、購入の意思決定に大きい影響を及ぼしたことは実感していたが、他の産業や文化にも大きな影響を及ぼしているようだった。
- クリーニング業界
- 売る前により高く売れるようにクリーニングを出すようなユーザが増えたこと。
- メルカリ以外のリユース業界
- 今までは買い取りそのものが選択肢にないか面倒に思われていたが、メルカリが流行りだすと服の買い取りに抵抗がなくなった人が増え、買い取り量が増えた。
オムニチャネルがそこまで浸透していない理由
ユニクロでは、5000円以上で送料無料だが、オンライン注文の店舗受け取りは金額に関係なく無料となっている。
日本でこういうサービスが他のECに浸透しないのは、IT関連に資本投資できないのが理由なのかなと思っていたが、
大手ECモール(楽天、Yahoo、特にZOZOTOWN)が幅を利かせてるのも一因だそう。
というのも、在庫管理がスムーズにできる必要があるが、ZOZOTOWNに出店するとZOZOTOWNが物流を管理しており、売上もZOZOTOWNに大きく依存しているので自社のみで動くのが難しいこと。
オムニチャネル発達には、物流を抑えているのが重要なのだなと思った。
その他
- Webサービスの紹介は、ほとんど知っているものだった。
- 数値面は知らないことも記載されていて、興味深かった。
- Web業界で働いていない人には、知らないサービスが多く参考になると思う。
- 海外の動向は、知らないサービスも多く面白かった。
- また、海外で流行ってるのはそれぞれ国土が広いなどの前提があって発達したものも多いので、一概に日本では流行るとは思わなかった。
- ZOZOTOWNのランキングが近年使い物にならなくなったと思ったら、戦略的なものだったということ。
- 比較的低価格な店舗にも出店してもらうため、ランキングのロジックを売上高ではなく数量に変更したらしい。
目次
概要・メモ
CHAPTER1 ファッション流通革新は10年周期で起こる
日本では、約10年周期で大きな変革が起きている。
- 1960年代:百貨店が「上質で豊富な品揃え」を実現
- 1970年代:総合量販店による「低価格化」改革
- 1980年代:カテゴリーキラーによる「価格破壊」へ
- 1990年代:SPAアパレル製造小売業による低価格品の品質向上
- 2000年代:トレンドファッションの低価格化
- 2018年:ファストファッションブーム終焉
また、日本の今後を予測するには、欧米のトレンドの10年後を追いかけてきた傾向にあるので、欧米の最近の事例に学ぶのが良いと考えられる。
- SPAやファストファッションSPAの価格を下回る「さらなる低価格化」
- チェーンストアによる、オンライン販売の拡大とオンライン注文商品の店舗受け取りの推奨
- 女性の内面の美を追求する、ランジェリーやスキンケアにフォーカスしたアパレルチェーンストアの拡大
- 店舗で無料体験を提供する業態の躍進
CHAPTER2 欧米では今、何が起こっているのか?
- プライマークの躍進
- ロンドンではクリック&コレクトが流行。
- オンラインで購入したものを実店舗で受け取るサービス。
- 宅配便は送料がかかり、到着まで3,4日かかるのに対して、翌日昼12時以降に受け取りやすい店舗で受け取れる。
- アメリカでは、実店舗の在庫をオンラインで購入して店舗で受け取るサービスが流行ってる。
- アメリカは国土が広いため。
日本で上記のようなオムニチャネルが流行りにくい理由
- ピックアップ場所の賃料
- 単純に高い。
- テナントによっては、売上の何%かを収めるような仕組みだが、オンライン決済のものを受け取るだけなので、賃料が発生しなくなるなど問題が発生する。
- ECモールへの依存度が高い
- 実店舗で受け取る仕組みを作るには、実店舗で十分在庫を持てるようになる必要があり、脱ECモール依存しないといけない。
CHAPTER3 次の流通革新を考える
なぜアパレルビジネスは難しいのか
- 難しいのは、季節性の変化や購入者の買うタイミングを考慮すると1ヶ月程度しか定価で売るチャンスがないにもかかわらず、商品開発は1〜2年かかるため。
- そのため従来では利益を上乗せしてリスクヘッジをとっていた。
- ユニクロやzaraなどのSPAは、全体管理することでリスクヘッジした。
- 在庫リスクを抱えないために、糸や生地などの時間のかかる生産を事前に行う。
- 必要に応じて、時間のかからない染色や縫製などを行う。
- 特定の色が売れ残るなどのリスクも回避でき、他の製品に生地を回すこともできる。
顧客に「失敗」させない、ZARAの最適解
- 提案するコーディネートは、お客さんのクローゼットを意識して、基本色を中心にしながらそこにトレンドを取り入れる。
- セールを年に2回しか行わなず、人気商品は売り切れるのでタイミングを気にせず購入できる。
CHAPTER4 インターネットが変えたショッピングの常識と残された課題
ゾゾタウンが実現した流通革新
- 2005年:ユナイテッドアローズなどの人気のセレクトショップの参入
- 2007年:マザーズ上場、独自のサイズ基準に当てはめて統一
- ブランド間によって異なるサイズ感の購入障壁を取り除く
- 2015年:売上ランキングのアルゴリズムを売上額から売上数量に変更
- 若者向けの比較的低価格なブランドを取り入れる
- 中価格帯以上は、ブランドの割引クーポン
- 2017年:プライベートブランド
- 2018年:ZOZO ARIGATO
メルカリがファッション購買にもたらした新しい価値観
- 日本のアパレル小売市場規模の1.5%を占める
- 国内の6位に位置する -「 新品を買うときに、値段の安い方ではなく、高く売れるものを買うという購買行動を取る人が増えている。」
オンライン購入の試着問題
- ゾゾスーツで服がサイズをあわせる
- アマゾン・プライム・ワードローブ
CHAPTER5 テクノロジーの進化を享受するのは誰か
今後は、購入するフェーズのみならず、購入してから着こなしたり、不要になったら売ったり、クローゼットを管理したりなどの全体のサイクルのテクノロジー化が及ぶと思われる。
- WEAR
- コーディネートの悩みを解決するために開発。
- SNS機能が本質ではなく、データベースを目指している。
- コーディネート画像からゾゾタウンで購入する購入率は7.4%で、業界水準と言われる2〜3%を大きく上回る。
- IQON
- airCloset
- プロが選んだ服を「着て楽しむ」という体験にフォーカス
- ル・トートというサービスは、創業者の妻が妊娠時期だったときの服装選びに課題を感じてスタート
- AIを活用したクローゼットの可視化と着回し提案アプリ
- SENSY CLOSET
- 「XZ(クローゼット)」をApp Storeで
- WEARとは違い、中級者が持ってる服の写真等を登録して、コーデの相談をSNS的に行うことができる。
- 買い足しにオススメな服を紹介する機能も2019年中にリリース予定。
- 中古市場
- ゾゾユーズド
- 2017年は49%が買い替え割によるもの
- ゾゾユーズド
- クリーニング
- 宅配クリーニングのリネット【TVCM放送中】 | 初回全品55%OFF
- 信用できる工場のみと契約して、質を担保した
- メインターゲットであるサラリーマンが平日受け取れない課題を、プレミアムサービスで早朝や深夜で受け取れるようにした
- メディアも運用していて、自社の売上だけでなく、服をキレイに扱ってほしいという創業者の思想があると思った。
- minikura
- 服などを預かってくれて、写真付きで管理できる
- 預かってくれるときに、クリーニングもしてくれるプランもある
- 不要になったら、そのままヤフオクで出品してくれて、写真も使えて、発送も対応してくれる
- 作者: 齊藤孝浩
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2019/02/21
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