「Spotify――新しいコンテンツ王国の誕生」を読んだ
- 作者:スベン・カールソン,ヨーナス・レイヨンフーフブッド
- 発売日: 2020/06/18
- メディア: Kindle版
感想
Spotifyの創業前から、上場後の2019年まで幅広く網羅されていた。
全体的にはAppleとの対比がかなり記載されていて、古くのダウンロード形式のiTunesの時代から現在のApple Musicまで、Appleとバチバチやりあってた。
他には、Spotifyは他のサービスと違って、あくまでも生涯無料で使える点で異なることが強調されていた。
創業期では特に、CEO含め天才エンジニアが多く登場して、こういうのを天才と言うんだなと自分の無力さも感じたw
事業的には、音楽配信にレーベルと契約する必要があるため、ユーザが無料で利用できるようにするには創業時からかなりの資金が必要で、会長が前の会社のexitで大金を手にした状態からスタートし、スウェーデン、ヨーロッパ、アメリカ、世界と徐々に展開できた点も重要だったように感じた。
Amazonでのレビューがあまり良くなく翻訳が微妙と指摘されていたが、冗長な表現だと感じるところもあったが、そこまでは気にならなかった。
Spotifyが創業期からどのように成長して上場していったのかを知りたい人にはオススメ。
気になった箇所のメモ
はじめに
- Spotifyがここまで大きくなった最大の要因
- まだ他の誰もしていない無料サービスに賭けたこと。
- スウェーデンで起業して、僕たちのモデルをヨーロッパでまず展開して、その後段階を踏んで海外組織に成長させていったこと。おかげでこのモデルには将来性があると最終的に音楽業界に認めさせることができた。
- 2008年にリリース。
第1章 秘密のアイデア
- spotifyの名前は勘違いから生まれた。
- spot, identitifyの組み合わせの造語だと説明している
- BitTorentなどのP2Pモデルに興味を持っていた
- exitした資金のある起業家と創業
- コンサルタントとして、スウェーデンで技術力が一番になるぐらい会社を育てあげ、そこのエンジニアをCTOとして引き抜いた
第2章 リーダル通りのエンジニアが実現したとてつもない技術
- 無料でP2Pで配信するのはレコード会社にとっては無謀だったが、以下のような強みを持っていた
- exitした経験と資産
- プロダクトへの明確なビジョン
- 他のエンジニアを引きつけるCTOの魅力
- マイクロトレントを開発した天才エンジニアを採用
第6章 富裕層マネーが流れ込む
第7章 すべての音楽を無料で ── 爆発する人気とボブ・ディランのボイコット
- 70%支払いで、最低保障付きでスタート
- 1年目は赤字に
- 何年も振り込まれず、ボブディランたちがspotifyから脱退
- イギリスには2ヶ月後に参入
- 2週間で100万ユーザ獲得
- 毎日1万人増えるペース
第8章 フェイスブック経由でアメリカ進出
第9章 スティーブ・ジョブズ、いよいよ立ちはだかる
- アメリカの大手レーベルと交渉を進める
- 特にソニーには2.5%の株式を格安で購入するオプションを与えるなど、レーベルに有利な内容となった
- 2012年の夏にようやくアメリカ進出
- すでにストリーミングサービスはあったが、どれも有料会員限定のものだった
- 最初は無料会員は招待が必要だったので、話題になった
第10章 ザッカーバーグとの駆け引きと、密かに生まれた最大のライバル
第11章 規模を追い求めて ── ダニエルの本音と結婚
- appleにも対抗したり、レーベルにも大きな態度を取れるように、ユーザ獲得に集中した
- CEOはハードワークを求めるタイプ
- facebook経由で登録したユーザは、LTVが低かった
- アフィリエイトも試したが、赤字になった
- 新しい国でも展開し、facebookの利用率の低いドイツではメールアドレスで登録できるように
- 後ほど、世界でもfacebookアカウントなしで登録できるようにした
第12章 幻のプロジェクト「スポティファイTV」
- 数十人のリソースをかけて、動画部門を立ち上げハードウェアまで作ったが、音楽事業よりもお金がかかりそうだと気づき、断念した。
第13章 アップルとビーツ、ライバル2社が手を組んだ
- アメリカではなんの操作もせずに好きな曲が流れてくることが重要なため、ラジオやレコメンドの開発が急務となった。
- 46億ドルでアメリカのスタートアップを買収して、類似の曲を提供しようとしたが、既存の仕組みとも合わず大失敗に終わった。
- ビーツはストリーミングサービスをリリースしたが、トラブルだらけで技術的にも優れてなかった。永遠に無料のプランはない。
- Appleは過去最高額でビーツを買収。ストリーミングやヘッドホンが目的ではなく、ジミーアイオヴィンが持つ音楽業界での知名度を得ること。
第14章 スポティファイ史上最大の危機
- PCでのユーザ体験は良かったが、モバイル対応が不十分だったため、アクティブユーザ数が減少した
- モバイル対応をして克服
第15章 テイラー・スウィフトがボイコットし、ジェイ・Zが競合を立ち上げる
- 2014年、テイラー・スウィフトがspotifyがアーティストに十分に支払ってないとして、楽曲を取り下げた
- しかし、有料会員数への影響は限定的だった
- さらに、ジェイ・Zがスウェーデンの他のストリーミングサービスの会社を買収し、高音質かつ有料専用のサービスを立ち上げた。多くのアーティストが参画しており、音楽業界の構図が変わってしまうとspotifyにとって脅威となりうる存在。
第16章 ビッグデータでアップルミュージックに対抗せよ
- Apple Musicがリリース
- 最初の3ヶ月は無料利用できるが、その間にはアーティストには支払われないものだったが、リリース前にアーティストが反発して、支払うようになった
- リリース後も動作が遅く、半年間は不評だった
- Apple Musicのリリースに対抗するために差別化できる機能が急務となり2つの機能をリリースした
- 1つ目はmomentsで、そのときの気分に合わせて選曲するというもの
- 2つ目はweekly discoverなどの機能
- ユーザが作成したプレイリストからレコメンドを生成する
- CEOも注目していなかったが、spotify史上でも大きな成功となった
第17章 スウェーデンが生んだ「成功物語」として
- 無料会員の中でspotifyに時間を多く費やす客を識別し、彼らに割引キャンペーン(3か月は月額1ドルでプレミアム)を展開。
- また、急激に成長するために、数百万人のユーザ価格を下げ、有料会員数を増加させた。
- 2015年末には、有料会員の割合は、前年度の1/4から約1/3と成長した。
第18章 ストリーミング戦争をいかに生き延びるか
- アーティストから嫌われる存在で、新曲等はspotifyで提供されないことも多かった。
- アーティストに好感を得ようとジェイ・Zのダイダルを買収しようと打診したが、高すぎて白紙に
- サウンドクラウドの買収も試みたが、アーティストとのライセンスなどの契約内容が想像以上に悪く、成立直前で白紙に
- Appleからはアプリの審査のリジェクトを何度も受けたりして、妨害を受けていた
- Apple経由で契約した場合30%ほど値上げした料金体系を展開していたため、そのユーザに対して、直接契約するだけで割引になるとキャンペーンのメールを送った
第19章 いざウォールストリート ── 特殊な方法でIPOを果たす
- 上場前にテンセントと事業提携し、株式も互いに交換した
- テンセントも音楽事業で数億のユーザを抱えていたが、ほとんどが無料会員だった
- 2018年にニューヨーク証券取引所で上場
第20章 次なるステップへ
- レーベルから影響を受けにくくするために、アーティスト育成にも手を出し始めた
- 音楽のみならず、音に関する事業を制覇するために、podcastの会社や制作会社を買収した。
- 作者:スベン・カールソン,ヨーナス・レイヨンフーフブッド
- 発売日: 2020/06/18
- メディア: Kindle版